Tonight,the night

広島に生まれ、今は奈良半分京都半分な中小企業診断士の備忘録です。

【読書・書評】捨てられる銀行

昨日のエントリにも書きましたが、早速書評を書いてみます。

 

 

1回目は銀行界、診断士クラスタで流行りのこの本。

 

書いてある内容自体は別に特段新鮮味があるというわけではありません。

ただ、本来市中の銀行が果たすべき役目である「預金者からお金を集めて、そのお金を事業者に融通する」という姿から乖離しているという指摘は、一応の的は得ているでしょう。

結局その理由はというと、不良債権処理マニュアルに基づき、担保万能主義や保証協会付き融資に走ったあまり、銀行がまともな事業性評価をできなくなった、というのがこの本で述べられていますが、

もっと突っ込んだ話をすればバブルの時に大半の銀行が銀行としての役割を自ら放棄し、それっきりの状態で根本が何も変わらぬままバブル崩壊を迎え、からの不良債権処理、そして今に至るというのが身も蓋もない現実ではないでしょうか。

 

目下、低金利競争でや黒田バズーカによるマイナス金利攻撃を食らって国債依存の多い地域金融機関が収益にダメージを受けた、そして借り手がないと嘆いているわけですが、それはまだましです。

もっと恐ろしいのは相続による預金流出でしょう。

現に過疎化が進む県ではもう始まっています。

これは何を意味するか。

地域金融機関の存立基盤である地域の顧客と、顧客から集めた投資原資である預金、その双方が加速度的に減少することにより、もはや商売が成り立たなくなるわけです。

 

ただ、悲しいかなこの業界のリスクを取らぬ横並び意識、いざとなりゃ公的資金という最終兵器があるさという親方日の丸な依存体質、ボリュームさえ確保しときゃ利益が減ってもまあええだろうという安直な茹でガエル思考がてっぺんから浸透しているあまり、厳しい現実に向き合いたくない、先送りしてしまいたいというのが実のところでしょう。

いや、当然そうじゃないと否定はするでしょうけれど、現実がそうですからね。

とはいえ、その危機感が強いところでは現に対策を始めている会社もあります。本書で出てくる北國銀行はそうした取り組みを行っているところの一つです。

 

話が逸れましたが、やはり地域金融機関に求められるのは、やはり徹底的な市場環境分析と内的要因の整理に基づいた戦略策定に基づく、本業回帰ではないでしょうか。そうか、スルガ銀行みたいに割り切ってビジネスモデルをドラスティックに転換させるか。正直、残された時間は多くありません。

その過程で、とりわけ地方創生が叫ばれているこのご時世、、診断士が求められる場面は今後増えてくると考えられます。この業界ができることは、いろいろ環境の変化があるとはいえ、まだまだあるはずです。

 

 

捨てられる銀行 (講談社現代新書)

捨てられる銀行 (講談社現代新書)